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金型CADでのモデリング試行
皆さんはCAEというとどんな事を連想するだろうか
当時は自動車や飛行機を設計する前に、3次元モデルで
強度を調べたり、風の流れを実物を作らずに調べる事が
出来るシステムというイメージだった
その他に、熱の伝わり方や、衝突実験の代わり、国では
津波のシミュレーション等がまだまだ研究され始めたという
段階だった
大がかりなものでは工場全体をモデル化し、生産ラインを
作る前に事前確認するといったことさえ考えられた
これはCIMとして紹介された
効果や手間よりも夢が先行した時代だった
多大な投資が実を結びそうだったのは自動車の風洞実験
位ではなかったかと思う
しかし、もっと切実に成功させなければならない業界が金型
ではなかったかと思う
プラスチック成型用の金型は今まで述べてきたように直線を
曲線にするため、平面はみな曲面になる、曲面を3次元で
意識しないと加工できない世界なのである
3次元CADCAMになる前は、自動プロと呼ばれる専用シス
テムで面データをなぞるツールパス(工具軌跡データ)を作成
し、それを工具の半径分オフセットさせてNC機で加工してい
た、自動プロが無い時代は多分NCもなかった
聞いた話では倣い加工機というのがあって、モデルを木や粘
土で作り、それをなぞって加工機のドリルに同じ動きをさせる
装置だったようである
私が金型設計を始めた頃はまだ倣い加工機が他社にはあっ
たらしい、むしろNCしかない会社の方が珍しかったようである
ところが上流の自動車をはじめとする製品群が続々と3次元
CADでモデリングされ始めると、倣い加工機を使うのに、モデ
ルを作る作業が必要になる
せっかくモデル抜きでできるように3次元CADを導入したのに
なんにもならない
だから当社で3次元CADを導入したら、モデルを作ってくれと
いう依頼がいくつか来た
しかし、製品設計用CADのモデルは特に面と面との隙間の精
度が粗く、工具軌跡がうまく作れなかった
金型CADメーカーともなんども相談したが理論的に難しいらし
い、素人目には0.1mmの隙間に直径10mmの工具が落ち
るわけはないと思うのだが、だめらしい
ようするに、面単位で加工し、隙間は後で人間がやすりで磨こ
うということで無理やりツールパスを出してみたりした
幸い少しして面と面とを繋ぐコマンドを作ってくれたので、一躍
モデル作りも仕事に加わった
こんなのはCAEとは言わないのだろうが、当時はモデルが作
れるだけで、立派にCAEだった
モデルの材料も研究した
木は高いし、大きな木はなかなか手に入らない
更に伐採してからひびが入らないように数年冷暗所に保管する
ため、場所も必要になる
試しに安い木を使ったら、節の部分が欠けてモデルにならな
かった
枝が出ていた場所に大きな穴があいたときは笑えた
とてもたまったものではない、違う材料を模索した
石膏を使ったら、加工カスが油にまみれてひどい事になった
プラスチックを溶かして四角に固めるのは材料も近くにあるし
うまいと思ったら、冷えるとひけが出来て中央がへこんでしまい
外箱に貼りつきとれなくなった
そうこうするうち注文が来なくなったので、うやむやになったが
わりと面白かった、最近ではレーザーを当ててXYZであたった
部分だけが凝固する液体でモデルが作れる装置があるそうで
ある
30年前に研究段階というニュースがあったが商品としてはまだ
世に出ていなかった
少数ならそのまま製品として使っても良いし、素晴らしいと思う
私が3次元CADを導入した当時はソリッドモデルはなく、CATI
Aが研究を始めたぐらいだったが、コンピュータが大容量になり
安価に可能になったのだと思う
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