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ファンモーターの標準化
私が生産管理の担当として、部品の調達リードタイム短縮に
取り組んでいた時期の話である
製品の構成部品をリードタイムの視点で整頓すると、
・汎用小物部品 -->いろいろなメーカーで同一規格の部品として販売している部品
ネジ、パッキン、ホース等
・汎用特殊部品 -->市場規模が小さく専業メーカーが受注生産的に作っている部品
カムスライダー、モーター、コンプレッサー等
・特注部品
・板金加工部品 ――>図面付きで注文し、場合によっては金型も貸与して生産依頼する部品
金具、カバー、機構部品等
・プラスチック成型品―>上記と同様
カバー、表示枠、機構部品等
・専用メーカー部品―>図面を渡して注文する部品、そのメーカーの固有技術がある
半導体、電子回路、モーター等
・内製部品(主に板金)―>社内加工部門で生産する部品
特許部品、大物板金部品等
この内、リードタイムが比較的長いのは汎用特殊部品と専用メーカー部品である
電子制御が花盛りだったころは慢性的な半導体不足が発生し、抵抗一個調達に3ケ月かかる
といわれた時期もあった
いづれもそのメーカーから他へ転注がきかないケースが多く、注文が集中すると一気にリード
タイムが延びる
それでも汎用特殊部品は多少は使用量が多く、ある程度在庫しておくという作戦が取れ、
運用が可能である
問題なのは専用メーカー品であった
ほとんど製品ごとに規格が違い、生産計画で対象製品の生産が減ると次の同じ製品の生産まで
在庫になる
しかもリードタイムが長いため、生産計画が不確かな状態で発注せざるを得なかった
注文を受ける側もある程度まとまった量で注文を欲しがった
この部品が製品を特徴づけるといっても過言ではなく、標準化はムリ
判り易い例で言うとシャープペンシルの芯の太さ1.1mmの製品の先端部分の筒である
他の部品は0.5と共有できる部分が多い
しかし先端の筒だけは0.5mmというわけにはいかない
加工には非常に高精度な特殊機械が必要であり、他社へ転注できない
私のアンテナに引っかかったのはファンモーターであった
注文してから納品まで3ケ月かかっていた
メーカーに3ケ月の内容を聞くと、当社の注文品は軸が太いため、汎用品の生産とは別に作って
いるとのことであった
つまり、汎用のファンモーターならリードタイムは短いどころかいつも在庫があるというのである
なぜ軸が特別に太くなければならないのか
自社に戻り担当の設計者に理由を聞いた
このファンは当初は汎用品だったが、風量が足りないため、狭い中で強くファンを回さざるを
得ないとのことだった
ところが実物を見るとファンモーターの置かれるスペースは外箱の一部が湾曲して大きな
モーターがおけないが、その湾曲自体が今は使用していない部品を付けるためのものであり
設計変更するとコストが掛るとの理由から放置されたものだった
設計担当が分かれているため、当初は相談して仕様を決めたが設計変更情報を伝えていな
かった
もっとも、ファンモーターの設計担当にはリードタイムの概念はない、素早く設計変更を終わらせ
別の仕事に向かわねば残業徹夜が増えるだけなのである
忙しいにも拘らず、私の熱意に負け、多少後回しになったがファンモーターと取りつけスペースの
設計変更は終了し、(その製品だけは) リードタイムが2ケ月から1日に短縮した
事実は小説よりも奇なりというが、現場にはこんな話はごろごろしている
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