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麺類食べ歩き
■その他
 ・かつどん      大松               伊勢崎市石山
  この店は大衆食堂である、どのメニューも肉体労働者向けの
  ややしょっぱい味付けである、だから事務職や年寄りはうま
  いと感じないかもしれない
  もう50年前になる、社会人になって一年目、見習いとして製
  造ラインで汗びっしょりになって毎日残業していた頃がある
  先輩に教えて貰い、仕事に疲れてたまには美味いものでも
  食って息抜きしたいと思った時、少ない給料で満腹を味わえ
  る店として時々立ち寄った
  客はダンプの運ちゃんとか私のような作業着姿の若い男が
  中心で奥からは調理の威勢のいい音が聞こえてくる
  新しい客が入って来て、初めてだとカツ丼は大盛で、それだ
  けでなくラーメンも一緒に頼む、他の店の量だと、カツ丼の大
  盛では量が少ないのである
  すると店主がにやりと笑い、「まあ、カツ丼を先に出すから、
  それを食べきったらラーメンも作るよ」という
  怪訝な顔をして待つ客、やがて一見普通に見えるやや大盛の
  カツ丼が出てくる、「だからこれじゃあ足りねえんだよ」といい
  たげに食べ始めるがやがて真顔になって行く
  飯がぎゅうぎゅうに詰まっていて見た目の2倍くらいある
  これが山になっているから、普通盛りでさえ他の店の普通盛
  りの3倍位はあると思う
  カツもご飯で山になった上に乗りきらないので、どんぶりの
  ふたにでかいのをざく切りにして2段重ねで乗っている
  ラーメンも一緒に頼んだから、店主のプライドに触ったので
  ある、普通にカツ丼だけ頼めば1.5倍位のご飯がふっくらと
  したカツ丼が出てくる
  これが大盛となると、店主の怒りが加わる、プライドに掛けて
  ラーメンは食わせねえ
  どんぶりに山になった飯を上から押しこんで平にしてから、
  一旦丼から出し、からになったどんぶりにもう一度飯を持って
  再びぎゅうぎゅうに押しこんで平にしてからさっきの飯を上に
  乗せる、こうなるとカツは乗せられないので、ザクザク切って
  どんぶりのふたに乗せる、カツも長さ30cm位はある(ちょっ
  とおおげさか、迫力がそう見せるのかもしれない、切らないと
  乗せきらないでかいのが、ふたに山盛りになる)
  足りないと言った手前、食べきらない訳にはいかない、必死
  に食べていると、店主が出てきてにっこり笑い、だまってナイ
  ロン袋をさし出す、これでリピーターになるのである
  私ごときでは、とてもカツ丼はこわくて頼めない
  焼きそばの大盛を頼むと、直径30cm位の皿に目一杯盛り
  付け、ちょっとでも箸で触るとぱらぱらと皿からこぼれおちる
  三角錘に盛られた焼きそばが出て来た
  紅ショウガは別に小皿(直径10cm位ある)に山に盛られる
  目を丸くして見る客、かわいそうにという目で見る客、しかし
  当時の私は大食いだった、なんとか食べられたのである
  店主がやるじゃねえかという目で見る
  にっこり笑って、今度来るときはカツ丼を食べなよと言う
  私も若かった、返すセリフを用意していた
  いや、これ以上食べると、家に帰って夕飯が食べられなくて
  家族が心配するから、あまりたくさん食べられないんです
  帰りは車の背もたれを2段階ぐらい倒してふうふう言いながら
  帰った
  時々腹が減って家まで持たないと思った時は立ち寄った
  相変わらず焼きそばの大盛を頼み、店主も当り前の様に
  黙って料理を作り、出すようになった
  私の事を知らない客は、頼んだ時に馬鹿目と言う顔をし、
  料理が出て来たのを見てかわいそうにという顔をし、食べ
  終わったのを見て信じられないと言う顔した
  やがて、間接部門に異動になり、結婚もし、足が遠のいた
  あれから50年、当時の店主は引退し、息子が跡を継いで
  いる、10年ほど前にテレビで紹介していたから、相変わら
  ず息子もカツ丼の大盛を作っているのだろう
  私は今では焼きそばの大盛どころか普通盛りさえあやしい
  でも懐かしい、時々昼間近くを通る、また拠ろうかな
 
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