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考え方の違い
フランスで暮らす中で日本人と考え方が違う部分がある事に気が付いた
幾つか書いてみた

・注文と納品
 私の会社では(日本では)コンピュータで生産管理システムを運用し、
 伝票を発行していた
 特に生産の都度必要になる部品の注文書はシステムにとって重要な
 仕事の一つである
 注文書と同時に納品書、検収書、倉庫搬入伝票は3枚がほぼ同じ内
 容であるため3枚複写で印刷していた
 注文書とは別に印刷していたのは、注文書は1枚に複数の部品を記
 入することがあるからである
 納品書は1部品1枚であった、共通事項が多く、注文書と納品書は
 感覚的にはセットになっていて、同時に発行し、同時に業者に渡すもの
 と思っていた
 つまり同じ日に業者に渡り、業者は部品を作ると、納品書を持って
 搬入に訪れ、2枚目の検収書にハンコを押してもらい帰る
 納入担当はその後、倉庫に部品を運び倉庫搬入伝票を部品箱に貼り
 納品書はコンピュータにデータ入力してから経理に回す仕組みである
 多少の改善はしているもののどの会社も基本的には同じやり方と思う
 少なくとも私はそのやり方に慣れ、疑問を持った事が無かった
 ところが、フランスで生産管理システムを作ろうとした所、注文書の印刷
 は異論がないのだが、納品書の印刷でどうも話が合わない
 なぜ印刷するのかと質問する、もっともフランス人担当者も、バーコード
 を使って業務を効率化したいと思っていたので、当社で印刷する事には
 賛成なのだが、何か歯切れが悪いのである
 いろいろ話し合っている内に、注文書のとおりに納品されないケースが
 フランスでは多々あるらしい事が判ってきた
 例えば不良率の高い部品は少し余計に納品するのでその分余計に
 払ってほしいといった交渉が注文のたびごとにあるらしいのである
 当社より前からフランスで現地生産していた日本企業との間でトラブル
 があったらしく部品メーカーでも神経質になっているらしかった
 確かに日本メーカーは不良分の部品代は支払わない
 むしろ罰金請求が行くくらいである
 その上、部品の品質要求がフランス企業にとっては異常な位厳しい
 フランス企業の対抗策らしかった
 結果として注文は注文、納品は納品で内容は不一致となるらしいのである
 日本では下請けと言う言葉がある位、部品メーカーは弱い立場にあるが
 フランスは対等なのだという、確かに新規参入して実績や信用もなく弱い
 立場なのは我々である
 結論として納品書を印刷する業者としない業者の区分を作り、印刷時に
 判断することとしたが、その後どうなったかわからない
 異文化というか異なる思想に初めて遭遇した瞬間だった

・費目
 経理の考え方に費目区分というのがある、会社で使うために購入する
 品物に番号を付けておき、分類に便利なようにしておくものである
 例えば製造ラインの装置関係とか総務の厚生用品と言った具合に分類
 する
 日本では例えば手袋でも製造部門が購入する場合は修理費用となり、
 総務部門が購入する場合は掃除用品となり、費目が違って登録できる
 費目は各部門が判りやすいように各々設定できる
 ところがフランスでは費目と品物は一つしか対応できないのである
 その根底にはモノの性格は一意であるという考え方がある
 例えば、水は水であって、それ以外ではない、だから総務で飲み水を
 福利厚生費で登録したら、製造部門でも福利厚生費なのである
 しかし、製造部門が部品の洗浄に特殊な蒸留水を購入したらどうか
 日本的発想では蒸留水は補助資材になる
 しかし、フランスでは福利厚生費なのである、それがダメなら別の共通
 費目に製造部門と相談して設定する
 従ってフランス性の経理システムを使って集計したデータを日本に送り
 使おうとした場合、使えないデータが発生する
 フランス人に(工場で働く人全員に)日本の費目を理解させ、伝票を書い
 て貰わないと多大な変更のための後作業が発生する
 日本人の経理マンがなかなか現地の経理マンに任せて日本に帰れない
 のはこんな所に原因があるらしい

・コード化
 生産管理システムでは部品を購入する業者を番号をふって管理する
 言葉では似たような名前の会社が情報入力ミスの原因になるし、第一
 名前をいちいち入力するのは面倒くさい
 そこで001番はOO電機設備鰍ニいった具合に対応付け、データ入力では
 001とだけ入れる、するとコンピュータは001番に対応する業者をすぐ横
 に表示し、確認ができるという具合である
 フランスに新しい工場を作るにあたり、業者コード表を作る事になった
 私と購買担当課長、生産管理課長、フランス人SEの4名がそれぞれの案を
 持ちより、検討する事となった
 日本人は3名とも3〜5桁程度のコードを考えて来た
 ところがフランス人は10ケタのコードを持ってきた
 国の識別から始まり、部品種類や企業のランク付けといったものを含み、
 しかも企業数が10万社になっても大丈夫というものだった
 それぞれの違いを説明し合う内に日本人は会社の取引が増えればコードを
 作りなおして増加に対応すればいいと考えている事が判った
 しかしフランス人は設定したものを会社が存続する限り使えるようにしたいと
 考えていた
 建物を見ても、フランスには500年〜600年立った建物を今も使っている
 場合が随所にみられる、私が住んでいたアパートも隣の博物館と同時期に
 できたもので500年前の建物だった
 まちを歩いていても古い建物の中がエスカレータのあるデパートだったりする
 使えるものは使うという文化なのだろう
 50年前の車に若い女性が乗って会社に通勤していた、なんでもおじいさん
 から譲り受けたのだそうである
 結論的にはフランス人が折れる形になったが、我々は彼に会社幹部として
 感謝の言葉を述べた
 年間契約の社員が、終身雇用の社員、それも管理職より会社の未来に
 期待している形になったのである
 フランス人侮りがたしと思った瞬間だった

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