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海外の思い出8
フランス人との交流
海外経験の長い先輩の助言に恥を捨てろというのがあった
話せない事は恥ずかしいことではない、話さない事が恥ずかしい事だという、名言と思う
気持ちを切り替えて必死に言葉を探し、話した
着いて1週間程して、会社の近くで一杯飲むというので半ば強引に参加した
お前みたいにずけずけフランス人の中に入ってくる奴は初めてだと言われた
不思議な事にその時の彼らとの会話を覚えているのだが、英語やフランス語でなんと
いったか出てこない
オフタイムなので通訳はいなかった
結構難しい事を行った記憶があるのだが・・・
例えば、白いビールと黒いビールがあるが両方飲んでみたいとか
お金を払うよと言ったのにいやいや今日はあなたがゲストだから私が払いますとフランス
人に言われたとか、本当の事を言うと、ここは会社で英語しか使えないうっぷんばらしに
フランス語だけしか使わないルールなんだとか・・・
酔った私の妄想だったのか、しらふでは何と聞けばいいのかさえ判らず、うやむやになって
しまった
以心伝心
毎日日本語の通じない環境にいると、言葉でなく態度や感じで判ろうとするようになる
相手も同じで、こちらの片言の英語でも何とか理解しようとしてくれる
仕事もそうだが、買い物でもそうだった、お互い利害が一致するからである
世の中に自分にそっくりな人が3人いるというが、私の同僚になったフランス人は正に私
そのものだった
もちろん姿は違う、しかし周囲の見る目もそのことを認めざるを得ないほど似ていたので
ある、憑依という表現が似合うほどだった
私も彼もプログラマーだった、年齢は私の方が5歳程上だった
しかし、考え方、少し人見知りな所、ちょっとしたしぐさ、2人で休憩時間にタバコをふかして
いる時、互いに楽しく談笑したいのだが、言葉が通じなくてもどかしく黙って座っている
そんな仕草一つ一つがそっくりに映ったに違いない
一番困惑したのは通訳だろう、二人の会話のスピードについていけないのである
なにしろ言葉にする以外の部分で意思が通じ合うのだから・・・
話が飛躍して前後の脈絡が無い話が素直に合意されていく不思議さ・・・
専門分野に関して2人で片言の英語でやりあい、生産管理システムのノウハウに関する
やりとりで、通訳がどう訳していいか判らないことを彼が片言の英語でキーワードだけしゃ
べると私が片言の英語で答える、更に日本語で補足する、しかし通訳が訳せない
その内容の複雑さと発する言葉の単純さのギャップがものすごく大きいのである
しかもそれが通じ合っている
ホワイトボードで単語を書きながら、ディスクやフローチャートの漫画を書いたりして、そこに
単純な英語が書かれるとそれで意味が通じる
正に以心伝心でないと理解できないレベルの会話が多々あった
彼の思考パターンと私の思考パターンがシンクロしていないとできない会話であった
半年して私が日本に帰る直前に、彼が自宅に招待してくれた、彼の父の漁船に乗せて
海を2時間程ただよった
今思えば、彼は父親に私を見せたかったに違いない
彼とはそこで別れた、
もう一人の自分よ元気でな、
君なしでフランスでの私の仕事はできなかった、本当にありがとう
必死に涙をこらえ笑って別れた
日本に帰り2ケ月で私の以心伝心能力は消えた、彼とはその後会っていない
2年ほどして彼が会社を辞めたいと言っているので引きとめて欲しいと、彼の上司から
電話があった
残念ながら、電話口では例の以心伝心で会話はできない
手紙を日本語で書いたが、彼の心境を判らずにただ引きとめるのに気が引けた
だから心のこもった文章にならなかった
彼は退社した
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