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人の話を聞く難しさ
私がコンピュータプログラマをしていた頃の話である
その当時はプログラムを作るというのは非常に手間のかかる仕事であり、また
専門知識も必要ないわば技能職であった
私の先輩の時代はプログラムと言うよりはロジック回路を組み立てると言う方が
相応しい時代があり、その当時は技能と言うより電子技術の研究者や、技術者
と言った方が似合っていた時代もあったと聞いている
更に時代が進むと、プラグラムは標準化やパターン化が進み、パターンをアレン
ジして組み立てる時代が来た
こうなると技能者と言うより組立工に近いかもしれない
結果的にコンピュータの基礎知識がほとんどなくてもプログラムが組めるように
なり、普通科の学校を卒業してすぐにプログラムを組むことが出来るようになった
今まではプログラムを組む仕事は依頼者から要求事項を聞き、システムを完成
させるまでの主要行程だったが、私が技能者として仕事をしていた時代の全体に
占めるプログラムを組む時間を80%とすると、プログラムを組む時間が短くなっ
たため相対的に比率が減り、全体の50%を切るようになってきた
かわりに最大工数として浮上してきたのが、依頼者からの要求を聞き、細部を
プログラムを組めるようにまとめる作業である
作業内容は営業やサービス業に近い
今までは黙々とコンピュータと向かい合っていれば良かったのに、人と話したり
場合によっては接待したりするのが主要な仕事に変化した
これがいやで転職した友人もいた
ネットワークのお守が複雑化したため、そちらに仕事をシフトした人もいた
人の話を聞くと言うのは、単に話をするのが苦手というだけでなく、プログラマには
もう一つの問題点があった、少なくとも私はそうだった
それはプログラムは曖昧は絶対に許されないが、人を相手にするときは曖昧で
ないと許されないという事である
「おはようございます」というのは朝の挨拶だが、朝と言うのは何時までの事を
いうのか、単に時間ではなく冬ではまだ薄暗い曇りではおはようだといわれれば
明るいとは何ルックス以下の事をいうのか、他に条件は無いのか
こんな事を真面目に悩むのがプログラマだといったら昔のお仲間はそうだと
いうだろうか、さすがの私もおはよう一つでここまで悩まないが、仕事となると
結構きっちりお客に詰めよったりしていた
それを一つ一つ文章にして確認するのである
お客の要求をプログラムの仕様に分解するとか展開するというのはようするに
そういう作業であった
一般人がこれに付き合うのは苦痛である、プログラマを変人扱いする人さえいた
曖昧なものは曖昧なまま理解し欲しいと願う人が多かった
だから会社内でプログラム仕様固めを繰り返すと相手も対策を覚え、ツーと言え
ばカーの相手を選ぶようになる
「君は僕の仕事内容を判っているようだしよろしくたのむよ」で片付けたいのである
しかし相手の考えている事を正確に把握するというのは難しい
ここで手抜きすると最後に来て「どうも違う」ということになる
プログラムは一般の製造物と違い見本を見せたり、似たようなもので確認すると
いう方法が取りずらい
結構どたんばで変更したり、最初と似ても似つかぬものになったりした
私はへぼなプログラマであったと思う、職人から抜け出せなかった
プログラム作りが技能職であった時代で止めて転職するべきであったかもしれな
いが、世の中甘くない、30過ぎた男を迎えてくれる仕事は、適当なものがなかった
考えてみればお客のいない商売は無いのである
程度の差はあってもお客に接する事は良い仕事をする上で大事だと思う
百姓仕事のようにまずお客を確保してから何を作るか決めるように業態変化を
迫られている仕事もある
「男は仕事をしている背中で語る」というようなことを若い頃に聞いたが、もはや
そういった職人は存在できないのだろうか
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