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PIPSの思いで
PIPSというのは磁気ネックレスではなく、業務用簡易ソフトの
名称である
まだコンピュータが8BITCPUでメモリーが64KBの制限があり
補助記憶装置は1MBの8インチフロッピーが普及し始めた頃
の事である
日本語入力はまだ先の話であり、パソコンはまだマイコンと呼
ばれていた
マイコンは現在と同じく一式で20万円位だった
プリンターも欲しかったがやはり20万円位して高根の花だった
コンピュータは仕事に使えそうだと言うので注目を集めていたが
事務用コンピュータは1000万円以上しており、リースで使うの
が一般的だった
そんな中200万円でハードからソフトまでセットでプリンターまで
揃うシステムが発売された
私の会社でも経理部が目をつけ3台購入した
会社にはあちこちに工場があり、営業部門も全国に10社程あり
各部署に経理担当がいて、事務の効率化と業務の統一した集計
が急務だったが当時の大型コンピュータとネットワークでは小回
りがきかず、例えば旅費精算や出金伝票処理等入力したデータ
を元にさっと伝票を社員に渡すと言った処理はできなかった
コンピュータは本社にありデータは全て本社に送ってから作業した
バッチ処理と言って、一旦全部集めてから夜間にシステムを動か
し翌朝伝票をまとめて発行し、各支店や工場に郵送するといった
業務形態になり、対応できなかったのである
プリンタ付きの事務用小型コンピュータで伝票をセットしてデータ
を画面入力し、伝票を発行する、今では当たり前にできる事が
1000万円以上の高いコンピュータでないと出来なかったが
それだけの投資をして全部の支店で一括購入する等は当社
では無理だった
だから大きな会社でもこういった「小さな」業務はコンピュータ化
出来なかったのである
そこへSORDコンピュータと言う会社が目をつけた
私も仕事がら教育を受け使ってみた
当時大型コンピュータ部門でマイコンを持っていたのは私だけだ
った、20万円を自腹でだして遊ぶ余裕は並の社員には無理だ
った、大学で多少の素養があったからできたのである
PIPSは8BITで動く業務システムとしては非常に良く出来ていた
データはプリンタ用紙のフォーマットに合わせ、横132文字を1行
とし縦は60行で1ページの構成だった
つまりプリンタ用の紙に文字を書いて行くイメージなので、理解し
やすかったのである
1MBのフロッピーにはたしか100ページ位書けたと思う
ワープロのように文字を書いておくだけでも当時のパソコンでは
難しかったのである
更に一枚の紙を列と行で区分出来た、例えば名前を10文字、
住所を50文字といった具合に定義し、一覧表のようにする
これを2列目の30行目といったふうに指定出来るのである
これをセルといった
ただしセルの区切りも一文字使った、つまり132文字に10個
区切りを入れると122文字しか入らない
こうして表形式に入れたデータを計算するために様々なコマンド
が用意され、セルを操作できるのである
コマンドは基本的に1〜2文字でその後に操作するセルの名前等
が続く、PIPSを操作できない人が見るとちんぷんかんぷんだが、
コマンドをある程度覚えてくると、作業内容が頭に浮かぶようになる
そして、修正も並んだ文字列を変更すればいいので、データを入力
出来る人はデータと同じように扱える
この判りやすい仕組みが受けた
エクセルのマクロと比較してほしい
エクセルにもマクロはあるが、VBEとかVBAといって、BASIC言語の
ような体系になり、もはやプログラムの専門家でも習熟しないと
使いこなせない
その上、記述が長ったらしくてデバッグも容易ではない
なにより、自分は操作したエクセルの作業との結びつきが判りずらく
どこを直せば何が変化するのかが直感的につかめない
64KBのメモリーで出来た事が、数テラバイトのコンピュータで満足
に出来ないのである
PIPSではプログラム経験者なら、名前と住所と年齢の書いてある
一覧表を年齢順に並べて、年賀状を発行するといった業務が自動
化できる事がピンと来ると思う
それまでは大型コンピュータのプログラマに依頼していた仕事が
自分のやりたいように手軽にでき、手直しもすぐ出来る
何万件も高速にデータ処理する業務には不向きでも小さな会社なら
1ヶ月分の経理データを数枚のフロッピーで入力し、決算処理を
するといった作業が仕事の合間に自動化できるようになる
当社だけでなく日本中の小さな事業体が購入したのもうなずける
SORDコンピュータはその後、大手のメーカーに押され、東芝に
吸収されPIPSはワープロの付録ソフトとしてしばらく販売されていた
私のような熱狂的なファンの要望にこたえ、パソコン用ソフトとして
フリーソフトでネットに掲載されていたので、今も私の手元にある
時々動かして懐かしんでいる
今ではエクセル等で似たような事が出来るため、使っている人は
少ない、最大の弱点は他社ソフトとの連携機能と思う
テキストデータでないとやり取りできないのである
また、データが132X60という紙のイメージのためそれ以上大きい
データを処理できるようにシムテムを改善しようとすると、素人に
イメージしずらい操作が入ってしまうのが欠点だった
例えば画面のスクロールはデータの一部を拡大縮小するなどの
操作が余計な作業として入ってしまうため、作業をプログラムとして
記録するという部分で整合のとりずらい事ができたのかもしれない
その開発の途中で会社が左前になってしまったのかもしれない
あの当時では他を圧倒する性能を誇っていたのになぜ消えてしまっ
たのだろう、グローバル対応する能力がSORD社になかったからか
思えばワープロの一太郎もそうだ、どう見たってマイクロソフトの
WORDより使いやすい
日本語変換機能だって数段上だ
良い物が残るとは限らないのは世の中の常だと言うがやはり寂しい
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