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コントロールとマネジメント

私の専門分野は生産管理である、長年そう言ってきたが、海外で仕事を
する中で、英語を交えて話をする内に自信がもろくも崩れ去った出来事が
ある
最初の出来事は赴任して数日して、まだ会社に入って間もないフランス人
の生産管理マンからの質問であった
「あなたの会社の仕事のやり方を教えてください」
彼がマニュアルのようなものを要求しているのは判った
しかし、生産管理には自社のマニュアルはおろか、一般的なテキストさえ
ろくなモノが無いのである
日本で本屋さんをあちこちうろつき回って調べたが、用語集の様なものが
あっただけである
言葉としてどんなものかは大まかに判るが、どういう仕事の仕方をすれば
いいのかは書いてない
仕事の仕方はそれぞれの会社で違うから、本には書いてないのだろうが
では自分たちの会社で先輩が仕事のやり方をマニュアルにしてくれたかと
いうと製造部門や開発部門ではそれらしきものがあるが、生産管理だけで
なくいわゆる間接部門ではマニュアルは無かった
それでも自分がコンピュータ部門でシステムを作った際に伝票の書き方の
ような事務処理的なものは作った事がある、コード体系もシステマーとして
作った事がある
しかし、生産管理のノウハウに関するものは皆無であった
なぜ我社は100個単位で生産しているのだろうか、製品の梱包材が100
個だから当然と思い、小ロット化を進めるように指示された時も、それでは
幾つ以下なら小ロットといえるのか、考えた事もなかった
第一梱包に合わないならロスが大きすぎるから小ロットは反対であると主
張した事さえある
MRPシステムの導入でも、新しい物流システムの導入の際にも、既存の
生産のやり方を根本から変更すると、何がどう良くなり、反面何が悪くなる
のか分析できないままであった
そんな状態でマニュアルがあるわけがない

そんな中で通訳を入れて何回目かの生産管理関係者との打ち合わせの中
で2番目のショックが襲ってきた
「生産管理の管理はどう訳せばいいですか、マネジメントですか、コントロー
ルですか」
自分では漠然と生産管理と日本語で言ってきたが、考えてみると、使い分け
ていたような気がする
製造部門で生産管理という場合はベルトコンベアーの速度のコントロールと
いう意味合いで使う事がある
特に自動化や無人化は進んでくると、その阻害要因を排除する活動は、生産
管理部門としても無視できず、大きな工数をかけて対応している
製造部門から上ってくる要求は社内だけでなく顧客や部品メーカー、海外事
情まで関係してくるため、非常に広範囲な活動に展開される
その場合生産管理の管理とはほとんどコントロールの意味合いになる
一方で、生産管理部門や工場長中心で活動展開する場合は、文書の伝達や
情報の清流化といった内容が多く、改善対象はマネジメントになる
その場合は生産管理と言えばマネジメントと訳すのが正しいと言える
打ち合わせのメンバーは生産管理関係者といっても、購買部門や部品倉庫
管理のメンバー、製造課長といった面々であり、思わず絶句したのは、どちらも
ありえたからである
もちろん時間をかけて面倒な説明をする事は出来る
しかしそれではプロとして失格である
プロたるもの初心者にはやさしく簡潔に説明できなければいけない

以上2点の恥ずかしい思いから、丁度ISO9000対応活動が始まったのを契機に
生産管理のノウハウを自分なりにまとめてみる事にした
出来上がったものは、自分で見ても非常に稚拙なものであったが、上司がそれで
良いという事なので不承不承マニュアルとして形に残す事になった
日本に帰ってから、改めて生産管理を勉強しなおしたのはいうまでもない
自分の未熟を恥じた
今回ホームページの形で生産管理のノウハウらしきことを書いているが、今でも
当時の恥ずかしい思いがよみがえってくる
いやそれゆえにこそ、恥を忍んで稚拙な文章で、ノウハウらしき事を書きなぐって
いるのである
基本的な事こそ文章化する価値がある、今ではそう思っている

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