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新しい仕事の成功要因
コンピューターシステムのシステムエンジニアをやってきて、手がけた
仕事が増えてくると、中にはうまくいかなかったり、自分では失敗だと
思っても、なんだかんだで運用されていたり、色々なケースに遭遇する
システム開発の場合、必ず自分にとって新規で経験した事のない要素
が存在し、ルーチンワークのような経験がものをいう要素が少ないと
感じる、ベテランといっても、担当する業務は経験が無かったり、ハード
ウェアが初めてだったり、私の様に外国で初めてのハードで初めての
パッケージソフトで業務も経験がない経理でと初めてづくしのケースさえ
ある
それでも「あいつはシステム開発のベテランだから」という扱いをされる
以下の文章は従って、新規開発のコンピュータシステムというケース
での経験をまとめたものだが、他の新規性の高いプロジェクトと名のつ
く仕事を経験した人は共感できる部分が有るのではないかと思っている
小さなプロジェクトでは自分が中心になる事が多く、ほとんどはうまく
いったが、大きなプロジェクトで自分は参加しただけの場合は、不十分
に感じる場合が多かった
自分の思った様にならない部分が多いというのが原因にはあると思う
が、最大の要因はコンピュータ屋の都合が優先され、使う人達が苦労
する仕組みが納期や開発費を理由に適当なレベルで終了するためと
思う、大きなプロジェクトほどその傾向が強い
また、小さなプロジェクトでもうまくいかない場合が何回かあった
これらのうまくいった場合といかない場合を統括的に捉え、自分なりの
成功要因を考えて見ると、大きく三つに分類できる事が判った
技術的な内容を期待されている方は、がっかりするのでこの先は読ま
ない方が良い
1.天の時
たまたま時代が求めていたとか、それまでは難しいとされていたこと
が技術的に可能になったといった、天運とでもいうべきものが味方を
することがある
常に業界動向をチェックしていれば、いち早く気が付くものである
自分が何をやりたいかということと、どうすればできるか、それを既に
実現しているメーカーや人がいるのかは、そのプロジェクトに関わり始
めたら気になるものである
私の場合はプロジェクトの話が持ち上がる以前に研究テーマとして、
別の仕事をしている時に既にリサーチしている事が多かったように思う
従って、使う事が無ければ空振りの知識に終わる
うまくヒットすれば他に先駆けて必要な知識を持った、うってつけの人材
という評価を得る事が出来る
仕事が回ってくれば、趣味と実益を兼ねたおいしい仕事になる
また、常に仕事を複数抱えた売れっこプログラマーでいられる
ニーズとシーズという言葉が有る
ニーズとは必要性、こんな商品が欲しいといった要望である
シーズとは技術の種とでもいうか、従来に無い性能をもった技術ができた
が、まだ商品化されていないという意味合いになる
シーズの代表的なものとして形状記憶合金が有る、硬いという金属の
常識を覆し、しかも元の形に戻るという性質は大きな利用価値があると
注目された、しかし具体的に商品化されたもので一番有名なものは
ブラジャーというくらいで、本来の特性を充分に全て生かしているとは
言えない状況であるが・・・
また40年前に人工知能の研究がされたが、活用されたのは少しづつで
あり、現在でもまだ発展途上にある、これもシーズかもしれない
天の時を得るとは、ニーズの先取りというより、シーズに近いかもしれない
将来こういうものが必要になるという予感からまだ誰も手を付けていない
事に挑戦する、仮にうまくいっても世の中でそれを必要とするかは判らない
しかし、必要とする時が必ず来ると信じて研究し続ける
天の時を得るにはそんな心構えが必要である
コンピュータシステムの新規開発プロジェクトでは、天の時を得るため
別の仕事で録をはぐくみながら、自主的に自腹でやってきた研究が役に
たったケースが多かった
冒頭であげたフランスで経理システムを担当した時も、主担当の生産管
理部門のすぐ隣が経理部門だったので、何となく聞きかじりで知識はあっ
た、またSEたるもの情報処理試験では一通りの業務知識を持っている
事が要求されるため、基礎的な知識は勉強していた
こういった事が幸いするのを私は天の時と考えている
この他に天の時に該当する出来事には「社長の鶴の一声」とか、「ライバ
ル会社の倒産」といったこともあるかもしれないが、ここでは触れない
2.地の利
プロジェクトは人の要素が大きいが、他の場所、他の会社では出来なかっ
たと思う事がある
例えば電子回路のCAMの場合、担当者が半分プログラマーの様な仕事
なので、システムを構築する際の最も重要なノウハウのプログラム化が
できたとか、別のページで書いたが金型部門では勾配が入った複雑な寸法
の計算をするために、作業者が関数電卓を持ち歩いており、図形処理
コマンドに対する抵抗が無く、開発したコマンドの検証作業が容易であった
りといった、従来の職場で壁になっていた事が容易な場合、正に地の利と
感じる事が有る
フランスで経理システムをシステム化した時も、フランス人はかのパスカル
やデカルトを生んだ論理的で議論の好きな国民であることが、私にとっては
心強い味方であった
結構難しいシステムの込み入った問題について辛抱強く聞いて、かつ、有益
な意見を述べてくれた、日本人なら1時間どころか10分で投げ出すような
ややこしい話を、容易に理解できる能力は、フランス人の長所である
私のような理屈屋が向こうでは平均値なのである
また地の利という意味では、群馬県と言う風土が味方していると感じる事が
有る
あまり知られていないことだが、文部科学大臣賞の一つに創意工夫功労者
賞というのがあるのだが、群馬県は私が知る限りずっと全国で10位前後を
保っている、大都市や大企業が全国には沢山あるのに人口でも産業でも
中くらいの県がなぜと思った事が有る
文部科学大臣賞・創意工夫功労者賞の授賞対象者は、理科系以外の大学
卒業者または高卒の主に企業で働く社員であり、管理者は除く、また研究開
発に従事するものは対象外である
つまり、あまり発明とか技術とか開発とかに無縁な人達が自分たちの仕事
について、創意工夫をして、仕事を改善したことを文部科学省に報告する
全国で1000人位を対象に優秀な者に賞が贈られる
最も受賞者が多いのはトヨタ系の企業でトップはアイシン精機である
県別では三重県、愛知県がトップ3の常連である
受賞件数はこの2県だけで全体の半分の500件位になる
群馬県は私が関与するまで10番位で件数は30件くらいであった
私がいた会社もトヨタ系のコンサルタントの指導を受ける中で、この話を聞き
チャレンジする事になった
初年度は6件受賞した、私が事務局をやって主に製造部門に日頃の改善活
動の中で創意工夫と言えそうなものを抽出し、書式をアレンジして提出しても
らったのである
強調したいのは私の会社が参加する前の段階で全国10位だったことである
群馬というのは工夫や改善、上昇気運、向上心といった気持の強い土地柄
なのである
だから北関東では、人口が多く、東京に近く、産業を起すのに有利なはずの
埼玉県や千葉県よりも工業が発達したのではと思っている
勿論東海地方には負けているわけであるが、内陸部の不利な条件を跳ね返
して、自動車(富士重工)や家電(サンヨー電機)の大企業が発展した事と
無縁ではないと思っている
群馬県では情報システム化についても新しいものを欲しがる派手好きな県民
性が幸いし、他県よりも新しい事に関心が高く、また行動力もある
みんなでやろうと言う事になると、それっと火が付くような所がある
これが新規事業や新システムの場合に好都合なのである
私も人一倍新しい事に興味をもつほうなのだが、これが個人的特性だけでは
なく群馬と言う地の利である事を創意工夫功労者賞の受賞活動を通じて初
めて知ったのである
3.人の和
一言で言えばチームワークと誤解されそうだが、ここでは「能力の充足」と
いった意味合いが強い
全体を引っ張っていけるリーダーは一人いればいい、2人以上いて双方が
リーダーたらんとするとかえってまずい事になる
それが原因でうまくいかないケースを沢山見て来た
例えばメーカーのリーダーとユーザーのリーダーの不和は、ぎりぎりの場面
では結構露呈する
ひとりひとりは専門家だが、各人が自分の持ち分を充分に発揮して、お互い
を補い合っていると感じるプロジェクトはそれなりの着地点を得る
それが最善かどうかは別として、その人のシステムと言えるものが出来る
チームの中に自分なりの構築後の姿を持っている人がいて、その人の望む
姿に仕上がる事が有る、その人は途中で判るのだが、始める時は担当であ
ったり、場合によってはプロジェクトのメンバーでなかったりする
必ずしも役職者ではない
大きなプロジェクトは力のある役員クラスの人がリーダーをやるべきという
もっともらしい意見を言う人がいる、コンピュータメーカーのSEにとっては
失敗した時の着地点の意思決定が出来る人と言う意味でそうかもしれない
しかし、掛けた金に見合うシステムが出来るケースでは、システム構築後の
姿をイメージしている人がいたか居なかったかが、成功要因である
残念ながら、プロジェクト開始前にその人を見つける事は私には出来なかった
構築中か後で判るのである
そういう人は話が下手な場合があるせいと思っている、だから表に出ないの
である
自分の仕事を真剣にやっていて、仕事のまずさを常にもっと良くしようと思っ
ていたり、他社動向等を勉強している人は、自分の仕事をどうすればもっと
よく出来るかについて考えており、しかし自分だけの力では出来ない事も
理解している、そんな時、自部門の改善改革の話があり、自分も関われそ
うだといった場合、かつ、身の程を知っているというか、自分はリーダーや
管理職の器ではないし、担当としての今の業務が好きで楽しくやれている
そんな人が隠れたキーマンである理由と思う
コンピュータシステムの様な新規性の高いプロジェクトにおける人の和とは
従来からの業務に精通しているとか、その部門の部門長で絶対的な権限を
与えられているとか、あるいはコンピュータメーカーから超優秀なシステマー
が派遣されてきたとか、V9時代のジャイアンツの様なオールスターとは意味
が違うのである
そういう人が何人集まっても画期的なものが出来るとは限らない
むしろ無難なありきたりのシステムが出来るに違いない
その業務の従来の慣習的やり方の欠点を知り、悩み、なかば諦めかけてい
る人にヒントとなるような新技術のシーズを判りやすく説明できるSEと、
新技術の専門プログラマー、斬新な業務イメージを具体的に実施できる若い
業務担当者といったメンバーが揃ったときのみ文字通りの「新システム」が
稼働可能になるのである
冒頭に小さなシステムは比較的うまく言ったと書いたが、人間どおしの仕事の
からみが複雑で理解しづらいと、各人が思いきって自分の領域で仕事がで
きないのが原因ではないか
自分は一つの歯車だとして、自分が回ることで全体がどのように動くのかが
判らない規模のプロジェクトはやはり「完成」という感触がつかみにくい
昔の人は一言で「天地人」とか、「天の時、地の利、人の和」といった
現代のそれも最先端のコンピュータシステム開発でも当てはまる
この事に気づいた後もしばらくは口に出せずにいた
SEという仕事をやめ、会社をやめ、コンサルタントでもやるとなったら言うべき
内容だからである
もう、今は関係ないので、気楽に話せるが、若造がほざく事ではあるまい
別のページ(3つのなんとか)でMECEについて書いたが、新規プロジェクトの
ポイントがこの3つだけという事ではあるまいが、では他になにがあるのかと
思うと小さなことは浮かぶがこの3つには及ぶまいと今だに思う
いくつかのプロジェクトに参加し、途中で気づいてからは、密かに確認する
自分がいた、いかにこの3つを充足させるか、どうしても満たせない場合は
どうするか、人には言えず腐心してきた
あなたがプロジェクトの一員になったら、キーマンになれとは言わない
この「天地人」の充足度会いの確認をされたらいかがだろうか
天と地は今さらどうしようもないと言った内容だが、物事を良い方から見るという
私の楽天的な性格が、自分の仕事に都合のいい部分を見つける嗅覚となる
しかし、もっとも重要なのは人の和である、これは隠れたキーマンがいるか
いないかという事に尽きる
いなければ、烏合の衆が作った何処にでもあるメリットの無いシステムになる
つまりデータ入力工数に見合わない効果しか得られないため、稼働当初は
お金をかけた分を取りかえそうと必死に運用するが、本音を判っているデータ
入力担当はいつしか、データ入力を手抜きするようになり、使われなくなって
いく、近年は会社間取引の必須情報(例;注文書、給与)のような重要システム
を新規に「画期的な」内容で作りかえるという事はほとんどなく、間接部門の効
率化のような、必須でない業務のシステム化が多くなり、入力工数に比べ、
得られる情報の効果が少ないシステムは余計に使われなく可能性が高くなっ
てきている
それだけに、新しいアイデアを持った実務担当者がいるか居ないかは重要である
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