TOP 自分の思い 邪馬台国 バイク 瓢箪 霊場巡り 囲碁と将棋 CAD/CAM 生産管理 海外の思い出 索引
バラス道の走り方
私がバイクに乗り始めた頃は、あちこちに未舗装の道があった
例えば100Km以上のいろいろな道を長距離走るツーリング
に行くと、おおよそ60〜70 %は未舗装だったと思う
中学の時、先生からヨーロッパでも先進国のフランスやイギリ
スでは舗装率が80〜90%だと聞かされて驚いた記憶がある
私の通った中学校は群馬の田舎だったがそれでも高崎市と渋川
市を結ぶ幹線道路の脇だったので、交通量は多い方だった
従って中学校のある周辺は舗装されていたが、その脇道はこと
ごとく未舗装だった、申し訳程度に幹線道路に出る20〜30
mの部分だけ舗装されていた
これは折角舗装した幹線道路に石ころや泥を持ちこまないよう
にするためだったと今にして思う
私が生まれる前には路面電車が走っていたそうで、群馬でも
比較的舗装が進んだ地域だったようである
大学に行き、バイクに乗り始めた時期も、中学から10年近く
経っていたが、それでもまだまだ未舗装の道があちこちにあっ
た
国道といえども市街地は舗装だが町と町の間は未舗装の場所が
沢山あった
3桁国道はほとんどがそんな状況であり、県道に到っては町中
でも人通りの少ない場所は未舗装だった
ツーリングに行く場合、一日の距離数は200Kmが今の30
0〜400Kmに相当したと思う
荒れ地用のバイクはようやく各社で発売され始めた位だった
当時はトレールとかスクランブラ―と呼ばれていた
私にとっては高根の花であり、いわゆるロードスポーツをどう
やって荒れ地でうまくコントロールするかが当面の課題だった
今や道と言う道はほとんど舗装され、近くの赤城山や榛名山に
登ってもこんな所までと驚く位、どの道も舗装されている
山奥の更に奥に入り随分頑張ったと思っていると、そこにキノ
コ狩りに来たと思われる軽自動車が停まっており、私のバイク
での冒険心ががっかりに変わった事がある、2度や3度ではな
い、釣り人のスーパーカブもなかなか奥に入っている
私が散歩している田んぼのあぜ道や、畑と畑の間の農道さえも
舗装である、こんな道一日に何台車が通るのだろう
人間が歩くだけならここまでしなくてもむしろ、適当に草刈り
をされた土の道の方が歩いていて楽しいのにと思う
昨日新しいバイクが納車された、Vストローム1000である
カテゴリーではアドベンチャーバイクと言うそうである
どんな道でも、どこまででも行けるというのが特徴らしい
モンゴルやアラスカの道なき道を行くというなら判るが、今時
こんなバイクを作ってどうするのか、世間では人気があると言
う、そういう私も中古とはいえ買ったのであるが
昔の様に道路の半分くらいがバラス道と言うなら判る
仮にそうだとしても、1000ccのビックバイクでバラス道
を走るには相応のテクニックとセンスが必要である
センスと言うよりも鈍感な感性と言った方がいいかもしれない
転んだら転んだでそれまでというような割り切りと度胸が必要
なのである
考えて見れば舗装路で転倒したら、近くには建物がある可能性
が高く、人を巻き込むかもしれないし、転倒した直後に車に踏
みつぶされるかもしれない
それから見れば、バラス道では近くに家も人も車もいない可能
性が高く、ころんでも擦り傷だけで済む可能性が高い
厚手の服や手袋、ヘルメット等で重傷を避けられる可能性が舗
装路に比べて高い、スピードも出ていない可能性が高い
見かけよりも安全なのである
そう考えて思い切ってテクニックを磨くつもりでアクセルを開
ける、そうこうするうちに徐々になだらかに安全に早く楽に走
るコツが判ってくる
今更こんな事を書いても役に立たないのは、冒頭述べたとおり
だが、自身の復習を兼ねてまとめて見る事にした
1.ゆっくり低いギヤで走るより、やや高速で高いギヤで走る
理由はバラス道はミュー(接地抵抗)が低いのでトルクをか
けるとタイヤが滑るのである
滑った時の立て直しにはタイヤの回転によるジャイロ効果を
利用してバランスを取りながら前輪でカウンターを当てて斜
めになりそうな車体を安定させる
理屈で言うと難しそうだが、バイクに乗れば誰でも程度の差
はあれ出来ている行為である、これを気持ちを落ち着けて、
後輪が滑り始めても冷静に実行できるかが成否を握る
やや高速とは、バイクよって異なるが40Kmから80Km
である、アドベンチャーバイクはタイヤ径が大きくかつ太い
のでジャイロ効果は高い、また同じ排気量のバイクに比べ、
重心が高くハンドル幅が広く、車重も軽く出来ている
また高速でも余裕があるように排気量が大きく、2気筒で、
エンジンレスポンスも緩やかであるため高速でも制御し易い
技量によっては80Km以上の高速で走る事も可能である
実際乗って見るとマルチエンジンや2サイクルと比べタイヤ
と地面との抵抗値が高く滑りづらく、滑っても立て直し易い
事がわかる、これはクラッチを切るとてきめんに安定感が無
くなる事から理解できる
2.忘れてならないのはエンジンの特性である
理由は判らないのだがシングルや2気筒の4サイクルエンジ
ンの方がマルチや2サイクルの連続でトルクを発生するエン
ジンよりミューが低い路面ではタイヤの食いつきがいい
ちょっと考えると逆だと思うのだが、実際走って見ると確か
に安定しているのは4サイクルシングルである
ただし回転数が高くなるとマルチエンジンに近くなる
感覚的なのだが3000回転位でエンジンの爆発音が断続的
に聞こえるくらいまでの回転数が上限の様である
並列2気筒だと3000回転ではなだらかになり過ぎる
2気筒だとVツインエンジンになる
排気量が300cc位だと3000回転ではトップで40〜
50km位だと思う
悪路でラリーの様なレースをする場合その速度では遅すぎる
100Km位の高速で走りたい、そうすると1000ccの
Vツインエンジンで3000回転で100Km位でるように
設定してもトルクで負けずに済みそうである
Vストロームに乗っていると、そんな環境を想定している事
が見えてくる
レーサーレプリカもそうだが、そんな速度で悪路を走る前提
のバイクを販売してどうしたいのだろう
少なくとも日本では乗る場所がないし、舗装路では無用なス
ペックと思う
4速で3000回転まで回すともう60Km出ている
トップの6速では2000回転である、Vストロームのエン
ジン特性はレースを意識しているのか2000回転以下では
ノッキングを起こし、回ってくれない
6速は高速で最低80Km以上出ていないと使えない
せめて市販車ではエンジン特性を低回転で使えるようにデチ
ューンするべきではないか、以前に乗ったBMWK100L
Tの様に1500回転でもトロトロ走れるようにすべきでは
なかったか
そうすれば同じギヤ比でも、ドコドコ感を長く味わえるまっ
たりしたバイクになったのにと思う
それとも私の知識不足で90度Vツインはハーレーの様に
低回転でトルクが出るようには設定できないのだろうか
上の方は5000回転も回せれば、充分である
スズキはVストローム1000を先に出し、現在は650と
250が台数的には売れている
スズキだけでなくアドベンチャーバイクのジャンル全体が、
小型化に販売の主軸が移っているようである
とり回しだけでなく、エンジン自体の乗りずらさも影響して
いるのではないか
バイク業界はハーレーを除き、見た目の性能でユーザーにア
ピールする悪弊がもう50年以上続いている
バイクの事をよく知らない初心者を相手に詐欺まがいの悪徳
な販売戦略は相変わらず見るに堪えない
3.出来るだけ遠くを見て、障害を早めに避ける、避けられな
い時は、ゆっくりスピードを落として安全に乗り越える
これは舗装路を走る時も同じである
バラス道はでこぼこが多いので右に左に出来るだけゆっくり
進路を変更しながら走る事になる
わだち等は大きく迂回する等臨機応変が求められ、それが楽
しさに繋がる
タイヤ径が大きいと小さな窪みはそのまま突っ込んでもなん
とかなる、排気量が同じでも、ロードスポーツよりアドベン
チャーバイクの方が踏破性が高いと言う事になる
また登り道ではカーブの先が見通せないため、ゆっくり走る
事になるが、そうすると低いギヤの為タイヤに高いトルクが
掛る事になり、バイクが滑りやすくなる
リーンアウトで出来るだけ先の方を見ながら常に道路の端に
よけられるようにして出来るだけ高速で高いギヤで回るのが
得策である
これは実は舗装路でカーブを曲がる時も同じである
レースでは対向車が来ないし、道路の状況も判っているので
リーンインのほうが早いかもしれないが、一般道では先を
見て安全を確保しながら曲がるのでなければ、命がいくつあ
っても足りない
バイク雑誌でレースシーン等を写真で紹介しているが、初心
者がこれを見て自分もやろうと考える事への警告はいくらや
ってもやり過ぎと言う事はない
リーンインは大きな誤解を与えていると思う
4、乗車姿勢は、短い距離ならしっかり二―グリップして、立
ちあがってバランスを取りながら走った方が早く走れる
昔の様にバラス道が何キロも続く場合はそれでは疲れるので
少しスピードを落として、シートに座って走る事になる
二―グリップをしっかりして、腰でバランスを取るのは同じ
である
長距離の場合はそれでも疲れるので二―グリップが緩くなる
そんな時大きなバイクは、ちょっとした揺れを吸収してしま
う安定感があり、慣れてくると少しくらいならバランスを崩
してもそのまま次の窪みに突っ込み、そこで反動を利用して
立て直すようなぐうたらなテクニックを覚えるようになる
ここまで習熟して初めて大型バイクは疲れないと言えるので
ある
小さなバイクや軽量なオフロードバイクではこの境地には至
らない
つまりアドベンチャーバイクは大きなバイクで荒れ地を早く
走れる人にとってはノスタルジックを感じる楽しい選択肢な
のである、私の購入動機にこのノスタルジック感があったの
は否定できない
しかし、私が乗っていたのは350ccのCB350であり
4サイクル2気筒だった
昔は750cc以上はマルチ(CB750、Z900)か、
2サイクル(マッハ750、GT750)しかなかった
4サイクル2気筒では650ccのW1とXS−1が最大だ
った
タイヤサイズは17〜18インチと今のロードモデルに比べ
やや大径だった思う
昔のバイクはバラス道を走る事が前提だったのではないかと
思う、だから舗装路専門のCB750が出た時は衝撃的だっ
たのである、ある意味これからの日本に適合したバイクの先
駆けと受け止めた人がいたのではないか
舗装路ならば当時は高根の花だったハーレーでも走れる
残念ながらお役所連中はそんな文明の兆しを感じ取る感性等
持ち合わせるはずもなく、世界を代表するオートバイメーカ
ーが4社も揃っていながら、文明国の中で最悪の規制をする
恥知らずな国と言う悪印象を世界中にばらまいてしまった
まあ、当時の行政の遅れや敗戦の後始末をしながらの道路工
事だったのでバラス道がこれから欧米並みになってゆく未来
を感じ取る精神的ゆとりがなかった事は責められないが・・・
ともかくバラス道をコントロールして走るには650cc位
が限度で、マルチと言っても2気筒や3気筒位の重さでない
と200Kgを超えてしまい、タイヤがバラス道で耐えられ
る限界重量を超えてしまうのである
いくら大きい方が乗りやすいと言ってもその位が取り回しの
できる限界で、それ以上大きいのはトルクがあり過ぎて意の
ままに操ると言う感じが無くなるので早く走れない
だからVストローム1000は昔の様にバラス道が多い場合
は敬遠されたのではないかと思う
前述したがモンゴルやオーストラリアのような見通しの良い
草原を腕の良い人がレースで100Km前後のスピードで走
るニーズでもないと1000ccはいらない
車重では200Kgが限界で排気量を考えると170Kg位
が理想的と思う、W1もXS−1も今のバイクと比べれば小
ぶりなバイクであった
カワサキもヤマハもバラス道が念頭にあったに違いない
ホンダからはSL350というアップマフラーの2気筒エン
ジンのバイクが出ていたが、当時は2サイクルに比べラフロ
ードでは遅いと言う事で売れなかった
ちょっと前にトランザルプ400と言うのがあったが、コン
セプトは同じである、時代が早かったと思う
購入したお店の話では、アドべンチャーバイクはキャンプ道
具等をたくさん積んで遠くまで走りに行く用途が適している
らしい、キャンプ場の近くの多少の荒れ地でも走れる「感じ」
がその気にさせるのだと言う
やれるものならやってみろというのが私の言い分である
乗車姿勢がどうとか、経験がどうとか言える世界ではない
物理的にでかいバイクでは石ころの間にタイヤを取られて痛
い思いをするのが落ちだと思う
5.バイク雑誌の広告記事でロシアの草原やモンゴル、オース
トラリアを走るツアーの案内が出ているが、現在ではアドベ
ンチャーバイクをノスタルジックに浸りながら走れるのは、
その位しかないのかもしれない
その場合は故障をしたらアウトだし、ガソリンの補給場所を
事前に充分に確認してからでないと危険である
パンクの危険性も舗装路に比べ格段に高い
バイクに乗るテクニック以前に、目的地に着けない場合の対
策をどのように考えるか
これが安全に走るための最も重要なテクニックになる
幸い日本国内ならば携帯電話が通じるので、一日分程度の食
料と水さえあれば命だけは助かる可能性が高い
昔は山に入る時は携帯食料と水と、数ℓ程度のガソリンという
事を意識したものである
また家族か友人に何日に帰るか告げてから山に入った、登山
と同じ覚悟が必要だった
モンゴルやロシア等の周囲に何も無い環境では携帯電話が無
い環境に戻る覚悟が必要と思われる
現在VストロームにはETCと30ℓのテールバックが付いてい
る、旅に出るにはもう少し荷物を沢山積めるようにし、ナビを
付けたい
ガソリンタンクが大きいのでタンクバックでも買おうかと思っ
ている
マフラーがシートのすぐ下に付いているため、かっこいいのだ
がサイドバックが積めそうにない
大体マフラーを上にする必要があるのか、川の中を走るのは、
テクニック以前にこのバイクでは無謀に近い
転んだ時にマフラーが取れないようになっていれば、低く水平
の方が、重心が低くて安定感に寄与する
マフラーを擦る程バンクする乗り方をするバイクでもあるまい
サイドバックが付けられない弊害の方が大きいと私は思う
最近のモデルはその事を指摘されたのかマフラーを「中間」に
伸ばすバイクが主流である
アメリカンのように足が火傷しそうな位置についているモデル
はさすがに見かけない
マフラーは丁寧にカバーが付いており火傷の心配はなさそうな
のでうまく紐でくくればサイドバックが付くかもしれない
助手席に付ける大型のバックでも買ってゴム紐で留める事は
出来そうである
幸い乗車姿勢は立っており、長距離走っても疲れは少なそうで
ある、バラス道の替わりに舗装路を気持ちよく安全に走って、
海沿いの民宿で温泉にでも浸りながら、昔、バラス道を走って
疲れ果て、結局目的地に付かずに諦めて引き返した昔を思い返
すのも気持ちが良さそうである
TOP