趣味について考える
・私が40歳になったころである
会社の先輩が「老後を生きる」ためのセミナーなるものを聞いてきて
そこで聞いた話を私に教えてくれた
趣味をやっているといえるのは、4000時間を超えてから
というのである
なぜそうなのかは話してくれなかったが、要約すると
一年は約50週間ある
毎週8時間、つまり日曜に一日中か土日に4時間ずつ、あるいは
毎日1時間でもよい、続けると8時間 X 50週間 =400時間 になる
これを10年間続けると 4000時間になる
先輩は自分の事よりも私が40歳であることを考慮し、今からやれば
50歳で趣味を一つもてるよとアドバイスしてくれたのであった
私は先輩のアドバイスを基にもう一つ趣味を増やすことにした
なぜなら、老後に足腰が弱くなり、頭がボケてもやれる趣味を持って
いなかったからである
前から囲碁を覚えたいと思っていたが、なかなか踏み切れなかったが
先輩の言葉で気持ちが固まった
・さてやると決めたものの、どう始めるか
たまたま自分の区の集会で公民館に行った時、行事予定表に囲碁
クラブの日程が書いてあったので、意を決してその時間に公民館に
出向いてみた
案の定、まずじろりと一瞥されたが、すぐに世話好きそうな人がにこにこと
近づいてきて、仲間に入りたい旨思い切って話すと、まずは会費はいい
から一か月お試し期間でやってみなさいといってくれた
当時の私は囲碁のルールは知っていたが実践経験は中学生の頃に
友人と少し、その後も遊びで少しやった程度であった
ただ、将棋が趣味なので新聞の将棋欄を見た後、判らないながらも
囲碁欄を見てはいたから、なんとなく形は知っていた
私の相手をしてくれたのは当時78歳になる方だった
私は石を5個置いて相手をしてもらったがこてんぱんに負けた
その方は私を慰めるつもりか、「あんたぁは若いからすぐ強くなるよ」と
誉めてくれた
私は負けながら全く別の事を考えていた
これこそ老後の趣味に相応しい
この方の様に自分も80歳になっても囲碁が打てる若さを維持したい
この方を人生の目標にしよう、素直にそう思った
後で聞いたことだが、大抵の人は最初に1回来て、コテンパンに負けると
来なくなるのだそうである
だから、私が何度負けても一向に気にすることなく続けるのを見て不思
議だったようである
囲碁の考え方欄でも書いたが、勝負事は勝ち負けよりも考え方が大事である
戦略、戦法、戦術の順に考え、戦略があっていれば多少の勝ち負けは
大きな勝利を得るための犠牲でしかない
何か別の勝負事でこんな考え方を学ばなければ、耐えられないのかも
しれない
自分は将棋を知っていたので幸運だったと思う
・ここで私の囲碁上達の過程を大まかに説明しておくのも、何かの参考に
なるかもしれない
・始めた当初は打った石が白黒の模様に見えていた
・だんだんつながって見えるようになってきた
・模様とか勢力の意味が目で見えるようになってきた
・取られそうな石、危なそうな石がなんとなく判ってきた
・盤面が4分割で(4隅単位で)見えていたのが、ある時1つに見えるように
なった、つまり一つの隅の戦いが他の隅に与える影響がなんとなく判って
きた
・2段ばねが出来るようになった、つまり石を捨てられるようになった(2個までなら)
・最初の10手目位までの重要性がなんとなく判ってきた
・先手の価値が判ってきた、どうすれば先手が取れるか考えるようになった
・石と石とのぶつかりあいそのものよりも、同時に発生する「背中の力」を
意識してぶつかれるようになってきた
・勢力の価値を体で判るようになった
・石の生死のポイントが見えるようになった
・定石を知らなくても、(定石が)打てるようになってきた
・白番の布石を意識できるようになった
ここまでが、現在の自分のレベルである
囲碁を知らない人にはちんぷんかんぷんと思うが、腕自慢の方はいかが
意味がお判りかな
こんな事を書くとさも強そうに聞こえそうだが、お世辞を入れて初段程度と上
級者に見立てて貰った
言い訳に聞こえそうだが、初段と言うのは最も幅広く相手のいる強さである
ハンデに合わせ石を置く事で、ほとんど誰とでも真剣に打てる
これ以上強くなるのは私には難しそうである、当初の目標通り、この棋力を
いかにして80歳まで維持するかがこれからの息の長い目標かなと思っている
・こうして10年間、まあおそらく4000時間位、囲碁をやってみた
その後もぽちぽち続けて更に10年間が経とうとしている
そろそろ60歳、定年が間近である、まだ足腰が動く
囲碁をやる時間は少なくなり、月に4時間位になった、新聞の囲碁欄は毎日
見ているから月300分=5時間として、合計10時間、以前の5分の1位であ
る、でももう趣味をやっていると言っていいはずだ
60歳を機に老人クラブのような所で囲碁をやっている人を見つけ、仲間にし
てもらおうかと思っている
足腰が丈夫なうちは野良仕事や動く趣味の方を重点的にやり、囲碁はのん
びりやろうかなと思っている
ところで、今頃反省しても遅いが、趣味って急かされたり、ノルマを背負って
やるものではないよねぇ
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