数字で語る
もう30年位前になるが、セブンイレブンの情報部門の方の講演を聞いた
当時急成長を遂げていた注目企業の情報戦略とは何なのか興味を持って
聞く事が出来た
一つ一つ勉強になる話ばかりであったが、とりわけ驚いた事がある
それは、抽象的な表現を数字に変えなさいと言う事だった
具体的な事例で言うと、例えば「お店に入りやすい」とはどういう事か
・かんばんが1Km手前から全ての道に置いてあり、案内されている
・店の目印が300m手前から見える(ドライバーが同乗者と相談し、意見が
まとまり準備するには最低この位必要)
・入口の幅が20m以上あり、段差が10cm以下でショックが少ない
・車を停めてからお店まで5m以内で入れる
・お店の照明が昼間でOOOルックス、夜でOOOOルックス以上
・扉は自動ドアで手を使わなくても入れる
・・・
こんな具合である
この方法の良い所は行動に移せる事、行動できるかどうかも、その結果が
どの位良いかも実施する前から判る事
同時にコストも判るので実施の判断が容易にできる事である
数字で語るのはセブンイレブンが最初ではない、兵法六韜三略という紀元
前11世紀に活躍した太公望が書いたとされる書の内、有名な虎の巻に
すでに出ている、何尺の槍を何本用意しろとか、戦車は10台とか具体的
に書くことで現実的な対処を促している
これに比べ、世の中にはスローガンしか言わない人が何と多い事か
私はやる気がありませんと宣言しているようなものである
やったことへの批判しかしない人もいる
改善の話でも書いたが、やらなければ効果もゼロなのである
出来てしまった結果を見て「俺ならこうする」という人も同類である
やる前に上記の例に倣い具体的に代案を出すべきである
抽象を具体化するには、要素に因数分解する能力が必要である
更に現状に満足せず、理想と現実のギャップを抽出しなければならない
そして、提案には事実と実証の裏付けが必要である、実証の結果が数字で
あり、やってみないと上記の例の様な数字は何一つ語れない事が判るであろう
セブンイレブンはこうやって「入りやすい」、「欲しいものがある」、「新鮮」・・・を
実現したのである
最近、「新鮮」に対する小売店と本部とのトラブルが話題になった
本部はおにぎりやお弁当は決められた賞味期限を過ぎたら捨てなさいと指示した
しかし、実際は傷んでいるわけではないので安く売りさばく等で少しでも利益確保
がしたいと小売り店が主張、小売店の権利はどこまで認められるのか裁判にまで
発展した
結果として小売店が勝ったようだが、小売店は「新鮮」の信用を失った事に留意
しなければならない
皆さんはなぜセブンイレブンが裁判までしてこだわったのか不思議に思わなかった
だろうか
単に1店舗だけの問題でなく、セブンイレブン、いや全てのコンビニがこの瞬間から
「新鮮」の信用を失ったのである
皆さんは「新鮮」をどのように因数分解し、具体化しただろうか
その中に「賞味期限以内であり、表示が信用できるものしか売っていない」という
定義が存在するはずである
ものによって鮮度が異なっては新鮮とは呼ばないと定義したのではないだろうか
そこにはお店の経営状態は関係ない、いやむしろ経営が赤字になっても鮮度が
保証されているという定義がなかったか
このように抽象を具体化すると、この事例の様に自分のエゴな部分まで見えてくる
自分の身の回りの事象について抽象的に考えている事があったなら、具体化して
みるのもまた面白いのではないだろうか
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